鍛冶屋のチカラ

巻頭特集 鍛冶職人 宇田直人

アーティスト活動を行うだけではなく、 建築様式にあわせた、数々の鍛造作品を世に送り出している宇田直人さん。 本場ドイツで学んだ、伝統的な鍛冶の技法を駆使し、 木と鉄を融合させることで生まれる、新しい住宅スタイルに注目したい。

鍛冶屋のチカラ1

街造りにも参画するドイツの鍛冶屋

 鍛冶屋の歴史は古く、人類が金属で装飾品や武器などを造りはじめた青銅器時代までさかのぼる。そして中世(日本においては鎌倉時代以降)の頃になると、ドイツをはじめとするヨーロッパでは、日本のように道具(農機具や刀など)を造るだけに留まらず、建築様式にあわせた様々な鍛冶技法が編み出され、大きく発展していた。今でもヨーロッパの街中を歩けば、歴史的建造物に限らず、看板や門扉、階段、手すりなどの身近な装飾物の中に、優れた鍛冶技法が見て取れる。

 そんな鍛冶の本場ドイツで修行し、茨城県日立市に鍛冶工房を構え、鍛冶職人として活躍しているのが、今回紹介する宇田直人さんだ。小さい頃から物づくりが好きだった宇田さんは、イラストやグラフィックの仕事をやりたいという希望があったが、どうせなら製造することころまで自分でやりたいと考えるようになった。そして富山にある国立の専門大学で金属工芸を学び、鍛冶の世界で生きていく決心を固めていく。

 卒業後、日本の鍛冶工房で修行した後の1999年、単身ドイツに渡った宇田さんは、2002年に日本へ帰るまでの3年3ヶ月の期間、世界最高峰のマイスターの技を目の当たりにしながら、伝統的な鍛冶技法を学んだ。ドイツの鍛冶は意匠的にも面白かったが、それ以上に、都市計画などのプロジェクトに、製作者サイドが、企画から関わるといったスケールの大きな仕事をしているところに魅力を感じた。スワロフスキーなどの有名メーカーとコラボレーションすることも珍しくなかった。大きな財産となったのは、日本とドイツの文化を比較して見られるようになったこと。統一感のあるドイツの街並みに比べると、日本の景観はコラージュ的で均一がとれていないように感じるそうだ。だからこそ彼の作品は調和をすごく大事にしている。

 ドイツから日本へ帰った宇田さんは茨城県日立市内の里山に工房を開いた。工房からは、カン!カン!カン!カン!というリズミカルで力強い鉄を叩く音が聞こえてくる。鍛冶仕事とは、鉄などの金属に熱を加え、柔らかくして、ハンマー等を使い整形していく技法のこと。ただ叩くだけのハンマーの操作で、魔法のように形を変えていく赤く熱せられた鉄。まさしく職人技と言っていいだろう。

宇田 直人[うだ なおと]

宇田 直人[うだ なおと]

1970年 埼玉県生まれ。1995年 国立高岡短期大学 産業工芸科 金属工芸専攻卒業。学長賞受賞。1997年 同大学 専攻科 産業造形金工専攻卒業 芸術学士取得。1997年〜2002年 鍛造技術修得のため日本およびドイツにて修行。2002年10月 帰国後、茨城県日立市十王町に鍛冶工房 "studio ZWEI" 設立。アーティストとして東京などで個展開催多数。グループ展、コンペ展、見本市などに年間複数出展。国民文化祭いばらき 2008 工芸美術部門「火造屏風」文部科学大臣賞受賞など受賞歴多数。
スタジオ ツヴァイ

studio ZWEI[スタジオ ツヴァイ]

茨城県日立市十王町高原416 問/050-8012-5102 http://www.net1.jway.ne.jp/s.zwei/

ドイツで学んだ伝統的な鍛冶の技法

これぞ鍛冶仕事!コークス(石炭を乾留処理した燃料)を使って鉄に熱を加え、赤くやわらかくなったところをハンマーで叩いて整形していく。