温・故・知・新 SUZUMO CHOCHINまだ見ぬ未来へ

温・故・知・新 SUZUMO CHOCHINまだ見ぬ未来へ

エレガンスであり艶麗。懐古的でありながらアバンギャルドにも感じる。
そんな二極性を内包するデザイナーズ提燈で伝統工芸に革新をもたらした
水府提燈の製造卸問屋「鈴木茂兵衛商店」。
新たな可能性を拓くフロントランナーは「SUZUMO CHOCHIN」で誰もまだ見ぬ、その未来を灯す。

温・故・知・新 SUZUMO CHOCHINまだ見ぬ未来へ1

デザイナーズ提燈、伝承のための革新

 「現代から未来を明るく照らし出す希望の光として巧くデザインされている」「仄かな灯りと和紙の持つ温かさや手作りの優しさは、人種や国籍を超えた普遍性がある」――。  今年、「2012年度グッドデザイン賞」に選ばれた、鈴木茂兵衛商店のデザイナーズ提燈「SUZUMO CHOCHIN」は、そう高く評価された。受賞したのは「びん型ちょうちんスタンド」、ミック・イタヤシリーズ「ICHI‐GO」と起き上がり小法師のように倒れない台座の「球面台座」(特許出願中)の3点。その中心の支柱に組み込んだスプリングのテンションにより堤燈の本体となる火袋を張るなど独自の新構造、手叩きなどでオンオフする音センサー機能、蝋燭の灯りを再現したLED光源、和紙やPET樹脂など燃えても環境に優しい素材が採用されている。

 もちろん全て職人によるハンドメイド。老若男女問わず誰でも安全に使用でき、あらゆる住まいにフィットする現代版提燈だ。 茨城県水戸市にある鈴木茂兵衛商店の創業は1865年の慶応元年。四代目の鈴木茂兵衛から現在まで、水府提燈製造と卸問屋を生業として続く老舗だ。水府提燈の歴史は江戸時代にまで遡る。石高の低い水戸藩の経済を支えるため、産業振興策の一つとして奨励して作らせたのがそもそもの始まりだった。その背景には必須材料の一つ、現在も茨城県常陸大宮市(旧山方町)で生産されている西ノ内和紙の存在が上げられる。「非常に丈夫。火事の際に井戸に投げ込んでも形が崩れ難いから、商家の大福帳にも採用されていたんですよ。水に漬けて絞る事も出来るぐらいだから、風雨から蝋燭のともし火を守ることが出来た」と鈴木隆太郎社長。和紙を張りつけるための外形は、螺旋状に竹ひごを巻き上げて火袋を整える一般的な手法ではなく、輪にした竹ひごを連続して繋ぎ合わせるという独自の手法が採られる。そうして堅牢で実用的な照明として水府提燈は重宝され、水戸は岐阜、福岡県の八女と並ぶ提燈の日本三大産地となった。後に茨城郷土工芸品にも指定。奉納提燈、盆提燈、看板提燈などが製造され続け、今では手法に関係なく、この地で作られる提燈は全て水府提燈と称されるのが一般的となっているという。 提燈は室町時代から日本で愛用され、現在も主に盆提燈や祭提燈など全世代にとって身近な存在だ。しかし、習慣やライフスタイルの変容、安価な輸入品に席巻され、水府提燈を手掛けるのは、今ではわずか3店舗。その現状に「行き止まりの状態がずっと続いている」。と鈴木社長は語る。

 「我々のような伝統工芸は、『消える』か、それとも『存続するために開拓していく』か、『開拓して全く違う業種になる』か、『販路を拡大していく』か。そういうことをしないと維持は出来ない」。

 無論、鈴木茂兵衛商店は伝統を拓く道を進んだ。約10年前から受動的な商いからの脱却を目指し、既存の提燈の魅力をそのままに、「びん型」など、今までにない新タイプの「今のくらしに対応できる提燈」、デザイナーズ提燈に挑戦していった。

提灯の日本三大産地
デザイナーズ提燈
鈴木隆太郎

鈴木 隆太郎[すずき りゅうたろう]

第7代目代表取締役社長。
茨城県水戸市在住。オリジナルデザイン提燈、 ミック・イタヤシリーズをプロデュースし、 伝統工芸である提燈を 「SUZUMO CHOCHIN」として 現代アートプロダクトの域に高めた。

オリジナルデザイン「びん型」

ミック・イタヤシリーズ「ICHI-GO」

ミック・イタヤシリーズ「球面台座」

ミック・イタヤシリーズ「球面台座」