古くて新しい平安時代の雅な匂い

西ノ内和紙を使用する茨城県の郷土工芸品は数多く存在する。城里町(旧桂村)で約80年の歴史を持つ「桂雛」もその中の一つだ。同町阿波山にある「桂雛 小佐畑人形店」では、雛人形職人の小佐畑孝雄さんが、師匠である祖父から受け継いだ伝統を生かしながら、現代の住環境に合う雛人形を提案している。
まず目を奪われるのが、優美なグラデーションの衣装だ。これは平安時代に確立した「かさねの色目」と呼ばれる伝統色。桂雛が纏う衣は、古くて新しいこの古典色彩の意味を織り交ぜ、ストーリーを込めて制作されている。衣装生地のレパートリーは、祖父の代のものも含めると約200種類。主に特注した京都の西陣織が使用されているが、結城紬、スイス製のシルクなど多岐にわたる。
「伝統的な生地も欠かせませんが、新たな生地との出合いも楽しい。この匂い(グラデーション)に子孫繁栄、松竹梅、人間の鑑となるような大人に成長して欲しいという願いを込めながら制作しています」。
雛人形は通常、制作工程に分業が多いが、桂雛は、人形の体部を一貫して手作りで制作される。体部は胴体の芯に藁を圧縮したものを使用し、針金で手足を付けていく。完成した胴組みに、襟をかけ、綿で肉付けし、衣装を着せ付ける。作り手の個性が最も出る工程は「振り付け」。肩の位置から千枚通しを支点にテコの原理で腕を前に曲げる、「一発勝負」のやり直しがきかない作業だ。この曲がり具合で全く違う雰囲気に仕上がるという。少女向けである雛人形は曲線を帯びたものが多いが、桂雛では肩や腕はより品格を生み出すためにスッキリした直線に近いラインが意図的に取り入れられている。このような男雛、女雛合わせて77の工程を経て、ようやく桂雛は完成となる。
結髪、頭、装飾品などそれぞれ専門の職人によって作られているが、衣装と同様、こちらも桂雛独自のもの。小佐畑さんは、雛人形職人であり、そのパーツ全てのデザインをするアートディレクターとしての役割も兼ねている。
「博物館に訪れたり、絵画をみたり、反物を見て、直感的に色々な所からイメージを膨らませています。半分趣味のように楽しく作業させて貰っていますね」。
今は2014年の新作を作成中だ。「アベノミクスの時勢ですので、ビビットな、豪華な色彩となる予定です」。

一組の雛人形を完成させるために180cm×90cmの西ノ内和紙を10枚使用する。非常に丈夫な西ノ内和紙により、生地の風合いを保ち、型崩れせず、防虫、除湿効果も期待できるという。

西ノ内和紙は、225種類の型紙に合わせて裁断される。出来上がりを想定して柄に合わせながら生地の裏面に糊を付けて貼り込む。ちなみに225という数字は完全を示すとされる15の倍数が由来。

大学時代、雛人形の見本市で雛人形に目を奪われ、職人の道を進んだ小佐畑さん。雛人形職人であった祖父、静岡県の人形店へ修行後、実家の人形店を継ぎ、職人歴は16年になる。

小佐畑 孝雄 [こさはた たかお]

(有)桂雛小佐畑人形店代表取締役。茨城県東茨城郡城里町在住。雛人形職人。
伝統を生かしながら、現代の住環境に合わせた 「桂雛」やインテリア雛シリーズ「SEKKA」などをプロデュースしている。