1962年 茨城県常陸太田市生まれ。幼い時から、父・小室義久氏が行う「かな料紙」の製作現場を見て育つ。米田版画工房にて摺師の米田稔氏より伝統木版画を学んだ後、24歳の時に「小室かな料紙工房」の三代目となる。伝統木版画彫摺技術保存組合会員。常陸太田市無形文化財指定。

工房はあくまで仕事場 次世代へつなぎたい 単身赴任に秘めた想い

かな料紙と聞いてピンと来る人は、そう多くはないだろう。書道のかな文字を書くための美しく装飾された和紙のことを「かな料紙」と言う。
この装飾和紙を製作しているのが小室久さんが三代目当主を務める「小室かな料紙工房」だ。
かな料紙造りには多くの工程が必要となるが、そのすべてを一人で手掛けるスタイルで製作している。
工房周辺はのどかな里山の風景が広がり、じっくりとものづくりに取り組むにはこの上無い環境だ。

小室さんの自宅は都心に近い埼玉県内にある。平日は生まれ故郷であり工房がある茨城県常陸太田市で、ほぼ過ごしている。
自宅では奥さんと二人暮らし。つまり単身赴任なのだ。これには理由がある。かな料紙の需要が見込める美術館や博物館は都心に集中している。
また、顧客である書家の先生も都心に多く住んでいる。平日は茨城の工房でかな料紙の製作を行い、週末は都心で顧客との打ち合わせや営業活動を行うのに便利なので、今の生活スタイルにしたというわけだ。工房はあくまで仕事場という位置づけだ。

そんな柔軟な考えを持つ小室さん。小さい頃は二代目である父親の作業する姿を見て育った。
見るばかりではなく、染めた紙を干すなど、作業を手伝う事も多かった。
途中迷う事があったものの、かな料紙造りに役立つ伝統木版画を学んだ後、小室かな料紙工房の三代目として後を継いだ。仕事に邁進する中、かな料紙の素晴らしさを多くの人に知って欲しい、次世代へつないでいきたいという気持ちが、自然に育まれていった。
現在では書家の先生をはじめとする顧客から絶大な信用を受け、かな料紙造りの第一人者として忙しく活躍している。

工房の目の前にはのどかな里山風景が広がる。
季節ごとの自然の美しさを楽しめる小室さんの生まれ故郷だ。

楢(なら)の木の皮を煮出すことで、かな料紙製作に使う染料を造る。下の写真はそのためのかまど。燃料にする薪も積んである。